2007年5月30日

山も谷もない長い文章

 夕方までにはまだ時間があった。
 毎日パソコンに向かい、消費カロリーが不足している3人は
 せまい軽自動車に乗り込み、心躍る被写体を求めて弥彦山へと向かった。

 車の中では、加藤先生やまつい店長はまったく興味がないであろう
 まったりとした曲が流れている。

 助手席のまつい店長は相変わらずひっきりなしにいろいろな話題を
 俺や加藤先生にぶつけ、俺は次に話をすることなど考えずに済むという
 楽な空気の中、弥彦山へと向かった。

 

 岩室から間瀬に抜ける山道に入る直前、道路を蛇が横断しようとしていた。
 蛇が苦手な俺は車を止め、ほどばしる寒気と鳥肌を抑え、蛇の横断を待った。

 5月の陽気ではすまされない強い日差しで、熱くなっているであろう
 アスファルトの上をすべるように進む蛇がスローモーションのように
 ゆっくりと動いていた。

 「蛇が嫌いだ」と喚き、「俺がどれだけ蛇が嫌いか」という内容の話を
 まつい店長と加藤先生は笑いながら聞いている。

 ようやく(といってもほんの数秒だが)蛇が車の前を横切り、
 山へと向かうと、学生の頃から何十回、何百回と通ったであろう
 海へと向かう道が現れた。

 通りなれた山道を鳥や花がないかとキョロキョロしながら進み、
 最初に狙ったポイントに車を止めると、雑草が生い茂り、
 とても写真を撮るような状況ではないことがすぐにわかった。

 ふと振り返ると、あたりには紫色の藤の花が咲き、
 静まり返った山には、鳥の鳴き声が響いていた。
 
藤

 藤を撮影すると、鳥が撮りたいという欲がでてくる。
 鳴き声だけでも数種類の鳥がいることがすぐにわかる。

 聞きなれたウグイスの鳴き声がかすかに迫る夏の雰囲気を
 強調し、浮き輪をもってこせがれと海に向かう自分の姿が
 頭に浮かんだ。
 
 しばらく鳥が出てこないかと待ったが、鳴き声だけで姿を現す
 気配はまったくない。どうやら鳥たちは人間の通るこの道付近には
 近づきもしないらしい。

加藤流食物連鎖

 鳥を待つのにも飽きてきた頃、藤を撮影するまつい店長を
 撮影しようとカメラを構えている加藤先生の後ろに立っている事に
 気づいた俺は、すかさずその様子を撮影した。

 以前、銀山平で加藤先生が言っていた「食物連鎖」。

 そろそろ戻ってハザギの撮影に向かおうかという話が出た頃、
 足元にはカメムシが急ぎ足で俺の前を通過しようとしていた。

カメムシくん

 とりあえず一枚撮っておくかという軽い気持ちでカメムシに向かい
 シャッターを切る。

 ピントをはずした。

 なんてこともないただの驕りである。

 カメムシの撮影に失敗したことは二人には内緒にして、
 車に乗り込み、ハザギの撮影前にアイスでもどうかと二人を誘った。

 カップルのたくさんいるアイス屋さんで、ダブルのジェラートを
 注文し、ヤギに葉っぱを食べさせながら食った。
 彼女と食べても、カメラをぶら下げたおっさん3人で食べても
 うまいジェラートだった。

 少しづつ太陽が傾き、水の入った田んぼに写るハザギと
 夕日を撮影するにはいい時間になってきた。

 静かに車に乗り込み、ハザギ撮影のポイントである夏井へと
 向かった。

 スゥー。っと深呼吸し、集中力を高める。
 三脚を立てたスローな撮影は苦手だが、ここは一発他の二人よりも
 いい写真をと気合が入る。
 
 撮影はここからが本番だ。

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